この記事の結論
- ホームページが必要かどうかは「業種」や「会社の規模」ではなく、「顧客や取引先が判断に必要な情報をWeb上で確認できず、機会損失(取りこぼし)が起きているか」で決まります。
この記事でわかること
- GoogleビジネスプロフィールやInstagramだけで十分なケースと、ホームページが必要になる状況の違い
- Web上の情報不足が原因で起こる「見えない取りこぼし(採用・法人取引・高単価サービス)」のメカニズム
- ツールごとの得意な役割(Google・SNS・ポータルサイト・HP)の使い分け方
こんな人におすすめ
- 「SNSやGoogleマップはあるけれど、ホームページも作るべきか」迷っている店舗・事業者の方
- 「自社のホームページを新しくすべきか分からない」と感じている経営者の方
- Web制作会社から「HPがないから作りましょう」と提案されて疑問を感じている方

最近、ホームページを持っていない店舗について考える機会がありました。
最初に思ったのは、
「ホームページがないなら、営業時間やアクセス、メニュー、写真、Instagramなどをまとめた、簡単な1ページのホームページを提供できるのではないか」
ということでした。
店舗側の負担を抑えながら、必要な情報をひとつにまとめる。Web制作の仕事としても、地域の店舗に提供しやすいサービスになるかもしれません。
ただ、考えているうちに、ひとつ疑問が出てきました。
それは、本当に必要なのだろうか。
Googleで店舗名を検索すれば、Googleビジネスプロフィールから営業時間、住所、地図、電話番号、写真、口コミ、メニュー、最新情報などを見ることができます。
Instagramを開けば、商品の写真や施工事例、店内の雰囲気、日々の営業状況なども分かります。
飲食店なら食べログ、美容室ならホットペッパービューティーのように、業種に特化したサービスもあります。予約までそこで完結することも珍しくありません。
そう考えると、
「ホームページを持っていない=ホームページが必要」なのではなく、そもそもホームページを必要としていないから作っていない。
そんな事業者も、かなりいるのではないかと思うようになりました。
今回はホームページを作る側の立場から少し離れて、「今の時代、ホームページは何のために存在するのか」を考えてみます。
目次
(※クリックで開閉します)
- ホームページがなくても困らない店舗は、普通にある
- 美容室も、ホームページなしで予約まで完結できる
- 「事業が成長したらホームページが必要」とも限らない
- では、ホームページの必要性はどこから生まれるのか
- 問題なのは「ズレ」ではなく、「ズレによる取りこぼし」なのかもしれない
- 新規の法人取引でも同じことが起こる
- 工務店のような高単価サービスでは、必要な情報が増える
- 事業が増えて「何の会社なのか」が分からなくなることもある
- Googleビジネスプロフィール、Instagram、ポータルサイト、ホームページは競合ではない
- 同じ業種でも、必要性は変わる
- 「ホームページがありますか?」ではなく、「判断できる状態ですか?」
- ホームページがないこと自体は、問題ではない
- 仮説
ホームページがなくても困らない店舗は、普通にある

まず認めておきたいのは、ホームページがなくても特に困らない事業者は存在するということです。
分かりやすいのが、飲食店です。
例えば、初めて行く飲食店を探しているとします。
Googleマップを開けば、場所、営業時間、料理の写真、口コミなどを確認できます。店舗によってはメニューも掲載されています。
もう少し雰囲気を知りたければInstagramを見る。
詳しいメニューや予約状況を知りたければ食べログなどを見る。
これだけで、
「この店に行ってみよう」
という判断までできることがあります。
この状態の店舗に、
- 営業時間
- アクセス
- メニュー
- 店舗写真
- Instagramへのリンク
を掲載しただけのホームページを新しく作ったとしても、GoogleビジネスプロフィールやInstagramにある情報を、別の場所にもう一度掲載しているだけになってしまうかもしれません。
もちろん、情報がひとつにまとまるメリットはあります。
しかし、それだけのために制作費を払ってもらい、その後も情報を管理してもらう価値があるのかは、別の話です。
美容室も、ホームページなしで予約まで完結できる
美容室も似ています。
Googleビジネスプロフィールで店舗を知り、口コミを見る。
Instagramでスタイルや店内の雰囲気、美容師さんの発信を見る。
ホットペッパービューティーで料金やメニュー、空き状況を確認して、そのまま予約する。
つまり、
知る → 調べる → 比較する → 予約する
という一連の流れが、ホームページ以外のサービスだけで成立します。
仮に個人経営の美容室が、
「Instagramから十分予約が入っている」
「ホットペッパービューティーから新規客も来ている」
「Googleマップにも必要な情報が揃っている」
という状態なら、ホームページの優先順位はそれほど高くないでしょう。
「ホームページがないので作りませんか」と営業することはできます。
でも、それによって何が改善するのかを説明できなければ、単に制作会社が売りたいものを提案しているだけになってしまいます。
場合によっては、
「今はホームページを作らなくてもいいと思います」
という判断があってもいいはずです。
「事業が成長したらホームページが必要」とも限らない

では、小さな店舗だからホームページが必要ないのでしょうか。
反対に、会社が成長すれば必要になるのでしょうか。
これも、それほど単純ではないと思います。
例えば、地域で長く仕事をしている会社があるとします。
紹介だけで仕事が入り、既存顧客から継続的に依頼があり、売上も安定している。
採用にも特に困っていない。
取引先も会社のことをよく知っている。
こうした会社であれば、たとえホームページが10年前に作られたままだったとしても、経営上ほとんど問題が起きていない可能性があります。
Web制作者から見れば、
「デザインが古い」
「スマートフォンで見づらい」
「実績が更新されていない」
「もっと会社の魅力を伝えた方がいい」
と気になるかもしれません。
しかし、それはWeb制作者から見た問題です。
経営者が実際に困っている問題とは限りません。
会社が成長したからホームページをリニューアルする。
従業員が増えたからホームページを作る。
創業○周年だから新しくする。
そうしたきっかけはありますが、「事業が成長した=ホームページが必要」とまでは言えないと思います。
では、ホームページの必要性はどこから生まれるのか
ここまで考えていて、ひとつ気になった状態があります。
それが、
「実際の会社」と「Web上から見える会社」が大きく違っている状態です。
例えば、地域で長く続いている会社があるとします。
実際には、
- 創業から長い
- 従業員も増えている
- 多くの施工・取引実績がある
- 新しい設備を導入している
- 法人案件も増えている
- 新しい事業を始めている
- 採用にも力を入れ始めている
ところが会社名を検索してみると、
- 数年前の情報しかない
- 実績がほとんど掲載されていない
- 何ができる会社なのかよく分からない
- 設備や対応範囲が分からない
- 採用情報がない
- 数年前の小さな会社のままに見える
ということがあります。
ここだけを見ると、「ホームページを新しくした方がいい」と考えたくなります。
ただ、これもまだ十分な理由ではありません。
なぜなら、Web上の姿が実際の会社と違っていても、それによって何も困っていないのであれば、経営上の問題ではないからです。
では、何が問題になるのでしょうか。
問題なのは「ズレ」ではなく、「ズレによる取りこぼし」なのかもしれない

ホームページについて考えるとき、重要なのはここではないかと思っています。
「実際の会社とWeb上の会社が違うこと」ではなく、その違いによって何かを取りこぼしていること。
例えば、採用です。
会社名を知った求職者が検索します。
ところがホームページを見ても、
「どんな人が働いているのか分からない」
「どんな仕事をするのか分からない」
「会社が何を大切にしているのか分からない」
という状態だったとします。
求職者はわざわざ会社に電話して確認してくれるとは限りません。
何も言わず、別の会社を応募候補にするかもしれません。
会社側からすると「応募が来なかった」という結果だけが残ります。
本当は興味を持った人がいたことすら分かりません。
これが、Web上の情報不足による「取りこぼし」です。
新規の法人取引でも同じことが起こる
製造業や建設会社などのBtoB企業でも考えられます。
例えば、取引先から、
「この会社なら対応できるかもしれない」
と紹介されたとします。
紹介された担当者は、まず会社名を検索するかもしれません。
そこで知りたいのは、
- 何を作れる会社なのか
- どのような設備があるのか
- どこまで対応できるのか
- どのような実績があるのか
- 自社と似た案件を扱ったことがあるのか
といった情報です。
ところがホームページには、「○○のことならお任せください」としか書いていない。
実際には高度な設備もあり、難しい加工にも対応でき、多くの実績を持っていたとしても、それを確認することができません。
その結果、
「今回は別の会社に聞いてみよう」
となれば、会社側には問い合わせすら届きません。
ここでも問題なのは、ホームページが古いことそのものではありません。
本来なら候補になれた会社が、判断材料がないために候補から外れてしまうことです。
工務店のような高単価サービスでは、必要な情報が増える
工務店を例にすると、飲食店との違いが分かりやすくなります。
飲食店なら、写真を見て「おいしそう」と思い、口コミと価格を確認して、その日のうちに来店することもあります。
一方、住宅や大規模なリフォームはそうはいきません。
Instagramで施工事例を見て、
「この家、いいな」
と思ったとしても、それだけで問い合わせる人ばかりではないでしょう。
例えば、
「なぜこの価格なのか」
「どんな考え方で家を作っているのか」
「他の工務店と何が違うのか」
「相談から完成までどんな流れなのか」
「どんな人が担当するのか」
「完成後の保証やサポートはどうなっているのか」
など、確認したいことが増えていきます。
Instagramは施工事例を見せることには向いています。
Googleビジネスプロフィールは所在地や口コミを確認するには便利です。
しかし、複数の情報を順序立てて説明し、「この会社に相談して大丈夫だろうか」という疑問に答えるには、別の場所があった方が伝えやすい場合があります。
ここで初めて、ホームページを作る意味が出てきます。
事業が増えて「何の会社なのか」が分からなくなることもある
地域の中小企業では、長く事業を続けるうちに仕事内容が変わることもあります。
最初はひとつだった事業から関連サービスが生まれ、法人向けの仕事も始まり、新しい設備を導入し、別の事業にも取り組む。
ところがWeb上には、それぞれの情報がバラバラに存在している。
Instagramを見ると最近の活動は分かる。
Googleビジネスプロフィールを見ると会社の所在地は分かる。
過去のホームページを見ると昔の事業は分かる。
でも全部見ても、
「結局、この会社は今、何をしている会社なのだろう?」
という状態になってしまう。
この場合も、Instagramをやめてホームページに集約する必要はありません。
InstagramにはInstagramが得意なことがあります。
必要なのは、それぞれをどう使い分けるかです。
Googleビジネスプロフィール、Instagram、ポータルサイト、ホームページは競合ではない

ホームページの必要性を考えていると、「SNSかホームページか」という話になりがちです。
でも、本来は競争させるものではないのかもしれません。
それぞれ得意な役割が違います。
Googleビジネスプロフィールは、場所、営業時間、電話番号、写真、口コミなど、「その店舗を利用するために必要な基本情報」を確認するのに非常に便利です。
Instagramは、商品、施工事例、日々の活動、スタッフ、店舗の雰囲気など、「今の姿」を見せることに向いています。
食べログやホットペッパービューティーなどのポータルサイトは、他店との比較、料金確認、空き状況、予約などに強みがあります。
そしてホームページは、会社全体の情報、考え方、サービス、ブランド、実績などを、自社が伝えたい順番で整理することに向いています。
だから、すべての情報をホームページに集約する必要はありません。
予約はホットペッパービューティーに任せてもいい。
口コミはGoogleに任せてもいい。
日々の施工写真はInstagramに投稿すればいい。
ホームページは、それらでは伝えきれない情報がある場合に使えばいい。
そんな考え方でもいいのではないでしょうか。
同じ業種でも、必要性は変わる
例えば同じ美容室でも、
「Instagramとホットペッパービューティーから毎月十分な予約が入り、新規客も困っていない」
という店舗と、
「高単価の髪質改善を中心にしていて、技術や施術方針について理解したうえで予約してほしい」
という店舗では、必要な情報量が違います。
工務店でも同じです。
紹介だけで数か月先まで仕事が埋まっている工務店なら、急いでホームページを作る必要はないかもしれません。
一方、これから新しい地域からの問い合わせを増やしたい、採用を始めたい、法人案件も増やしたいのであれば、Web上に必要な情報が揃っているかを確認する意味が出てきます。
製造業でも、既存の取引先だけで安定しているならホームページの優先順位は低いでしょう。
しかし、新規取引を増やしたいのであれば、設備、加工範囲、ロット、実績、対応可能な素材などをWeb上で確認できることが、問い合わせ前の判断材料になるかもしれません。
つまり、
「飲食店だからホームページはいらない」
「製造業だからホームページが必要」
と業種だけで決めることもできません。
見るべきなのは、
その会社の顧客が、問い合わせや購入、来店、応募の前に何を確認する必要があるのか。
そこなのだと思います。
「ホームページがありますか?」ではなく、「判断できる状態ですか?」

ここまで考えてみると、ホームページの有無だけを確認しても、あまり意味がないように思えてきます。
それよりも聞いてみたいのは、
「あなたの会社を初めて知った人がWebで調べたとき、問い合わせ・応募・来店などを判断するために必要な情報を得られる状態になっていますか?」
ということです。
答えが「はい」なら、ホームページがなくても問題ないかもしれません。
GoogleビジネスプロフィールとInstagramだけで十分なら、それでいい。
ポータルサイトで比較から予約まで完結しているなら、それでもいい。
既存顧客と紹介だけで事業が成立していて、新しい人に知ってもらう必要がないのであれば、それもひとつの形です。
逆に「いいえ」だったとしても、すぐにホームページを作る必要があるとも限りません。
営業時間や写真が分からないだけなら、Googleビジネスプロフィールを整えれば解決するかもしれません。
最近の施工事例が見えないなら、Instagramを更新する方が早いかもしれません。
予約方法が分かりにくいなら、ポータルサイトの情報を整理することで改善するかもしれません。
それでもなお、
「会社の考え方を伝えたい」
「複数のサービスを整理したい」
「実績や対応範囲を体系的に見せたい」
「採用候補者に会社のことを詳しく知ってほしい」
「高単価なサービスについて、納得できるだけの情報を届けたい」
というものが残ったとき、ホームページという選択肢が出てくる。
この順番で考えた方が自然なのではないでしょうか。
ホームページがないこと自体は、問題ではない

Web制作をしていると、ホームページを持っていない会社や、長く更新されていないホームページを見ると、どうしても「改善できるところ」を探してしまいます。
それが仕事だからです。
でも、ホームページがないこと自体は問題ではありません。
古いこと自体も、必ずしも問題ではありません。
問題になる可能性があるのは、
実際には会社に価値や実績があるのに、それを必要としている人がWeb上で確認できず、その結果として問い合わせ・応募・来店などの機会を失っている状態です。
しかも、この「取りこぼし」は見えにくいものです。
問い合わせフォームまで来て離脱した人ならアクセス解析で見えるかもしれません。
しかし、Googleで会社名を検索して、情報が足りないと感じ、そのまま別の会社を調べ始めた人の存在を会社側が知ることは難しいでしょう。
だからこそ、単に「ホームページがあるか、ないか」を見るのではなく、
Web上にある情報だけで、初めて会社を知った人が次の判断まで進めるのか。
という視点で一度確認してみる価値はあると思います。
その結果、
「Googleビジネスプロフィールだけで十分だった」
でもいい。
「Instagramをもう少し整理しよう」
でもいい。
「今は何もしなくていい」
という結論でもいいと思います。
そのうえで、既存のサービスだけではどうしても伝えきれないものが見つかったときに、ホームページを検討すればいい。
ホームページを作るべきかを考える前に、まず、
「誰が、何を知ったうえで、どんな行動をする必要があるのか」
を考えることから始めてもいいのかもしれません。
仮説

今回、ホームページを持っていない店舗について考え始めたところから、ここまで考えてきました。
そこで現時点では、ひとつの仮説を持っています。
ホームページが必要になるのは、事業が成長したときではなく、顧客・求職者・取引先などが意思決定するために必要な情報と、現在Web上に存在する情報との間にギャップが生まれ、そのギャップによる「取りこぼし」が起き始めたときではないか。
もちろん、実際に取りこぼしが起きているかどうかを完全に把握することは難しく、この考え方がすべての事業者に当てはまるとも限りません。
ただ、「ホームページを持っているか」という基準よりも、
「今のWeb上の情報で、相手は必要な判断ができるのか」
という基準で考えてみる。
その方が、ホームページを作る側にとっても、使う側にとっても、今のWeb環境に合った考え方なのではないかと思っています。
