先日、問い合わせフォームから、立て続けに営業の連絡が届いた。
普段であれば営業メールにはそれほど反応しないのだけれど、そのうちの一通に少し目が止まった。
私のサイトに書いてある「ホームページは、完成しない。」という言葉を拾い、その考え方と、私が和菓子職人からWeb制作の世界に来た経歴をつなげて書いてくれていた。
「ちゃんとサイトを見て送ってくれたんだな」
そう思って、返信することにした。
ところが、そのほかの営業メールを読んでいると、ふと疑問が湧いた。
これ、AIが書いているのかもしれないな。
今なら相手のWebサイトのURLと、自分の経歴やサービス内容をAIに渡せば、
「相手のサイトを分析して、共通点を見つけ、その会社向けの営業メールを書いて」
ということが簡単にできる。
そう考えると、最初に感じた「ちゃんと読んでくれた」という印象も、本当に本人が時間をかけてサイトを読んで考えた結果なのかは分からない。
でも、そこでさらに思った。
それを言ったら、自分も人のことを言えない。
私も文章を書くときにAIを使う。
考えていることを投げて整理してもらったり、うまく言葉にならない部分を文章にしてもらったりする。
この研究ノートだってそうだ。
では、AIを使って作られた文章は「その人の文章ではない」のだろうか。
どうも、そんな単純な話ではなさそうだ。
AIが書いたかどうかは、それほど重要ではないのかもしれない
例えば営業メールを書くとして、
「3310Labに営業メールを書いて」
とだけAIに指示する場合と、
「相手のWebサイトを分析して、その会社ならではの特徴や考え方を拾い、自分との接点を見つけた上で営業メールを書いて」
と材料を渡す場合では、同じAIが書いた文章でも意味が違う。
後者では、
何を見るか。
何を拾うか。
どこに共通点を感じるか。
何を伝えるか。
そこまでは人間が考えている。
AIが担当しているのは、その考えを「文章」という形に整える部分だ。
そう考えると、問題は、
「AIを使ったかどうか」ではなく、「どこまでを自分で考えたのか」なのかもしれない。
道具を使うことと、考えること
Web制作でも似たようなことがある。
コードをすべて自分で書いたから偉いわけではない。
ライブラリを使うこともあるし、過去に書いたコードを流用することもある。分からないことがあれば検索するし、今ならAIにコードを書いてもらうこともある。
重要なのは、出来上がったコードを自分で理解し、なぜそれを使うのかを判断できることだと思う。
文章も同じなのかもしれない。
AIが文章を書いたとしても、
「何を伝えたいのか」
までAIに丸投げしてしまうのと、
「伝えたいことは自分の中にある。うまく言葉にできないから手伝ってもらう」
のとでは、同じように見える文章でも、その中身は違う。
AIによって、人間の仕事が一段上に移った
これまでは、
考える。
言葉を探す。
文章を書く。
推敲する。
これらをすべて一人でやっていた。
AIを使えば、この中の「言葉を探す」「文章を書く」「推敲する」のかなりの部分を任せられる。
そうなると人間に残るのは、
何を見るか。
何を感じるか。
何を疑問に思うか。
何を伝えると決めるか。
なのかもしれない。
むしろ、ここを持っていないとAIに何を書かせても似たような文章になる。
逆にここさえ自分で持っていれば、文章を書く工程の一部をAIに任せたとしても、その文章にはその人なりの考えが残る。
では、この文章は誰が書いたのだろう
ここまで考えて、一つ面白いことに気づく。
この研究ノート自体も、AIと一緒に作っている。
きっかけは、私のところに届いた営業メールだった。
「これ、本当にブログを読んだのかな」
という疑問があって、
「AIが考えているのかもしれない」
と思って、
「でも俺もAIを使って文章を書いているから、人のことは言えないな」
と笑った。
そこから、
「では、AIを使った文章は誰のものなんだろう」
という問いが生まれた。
文章そのものを整える作業はAIにかなり手伝ってもらっている。
でも、この問いが生まれたのは、私の日常の中だった。
そう考えると、少なくとも今のところ私は、
答えを書くことより、問いを持つことの方が人間の仕事なのではないか
と思っている。
仮説
AI時代に人間が持つべきものは、「文章を書く能力」そのものより、「何を考えるかを決める能力」なのではないか。
AIは、与えられた材料を整理し、言葉にし、読みやすい形にすることができる。
しかし、
何に違和感を覚えたのか。
なぜそれが気になったのか。
自分はどう考えているのか。
相手に何を伝えたいのか。
その出発点までAIに任せてしまえば、そこに自分がいる意味は少しずつ薄くなっていく。
だからAIを使わないことが重要なのではない。
AIに渡す前に、自分が何を持っているか。
そこに、その人らしさが残るのではないだろうか。
3310Lab 研究ノート No.012
